刑事事件

起訴された場合

起訴と不起訴のどちらになるか

不起訴を目指して

刑事事件の流れで説明したように、勾留期間中に検察官は起訴をするか、それとも不起訴にするかを判断します。不起訴になれば、無罪と同じですので、逮捕後には弁護士は不起訴処分になるように弁護活動をしていきます。
不起訴処分になる件数自体は、一般的に皆さんがイメージしているほど少なくはありません。ですので、もちろん事件の内容にもよりますが、軽微な事件であれば不起訴となることも十分に期待できます。
※参考までに、平成29年度に起訴された人数・割合は次のとおりです。

検察が対処した最終的な総数 106万3320人
起訴された人数 32万9517人
起訴された割合 約30.9%

「平成30年版 犯罪白書 第2編 第2章 第3節 被疑事件の処理」 参照

起訴には2種類ある

もっとも、重大事件や被害者との示談が成立していない場合など、不起訴にならずに起訴される場合ももちろんあります。起訴には、略式起訴と公判請求の2つがあります。略式起訴された場合は、略式命令により、有罪として罰金刑が課せられますが、身柄自体は釈放されます(あくまで有罪ですので前科は付きます)。
ここでは、身柄拘束がその後も続く公判請求について、説明します。

公判請求(起訴)されるとどうなるの?

では、不起訴にならず、起訴されてしまった場合は、どのようなことが起こるのでしょうか。

被疑者から被告人へと名称が変わる

まずは、それまで被疑者と呼ばれていた名称が、被告人へと変わります。呼び方の問題だけでたいした事ではないようにも聞こえますが、被告人にしか認められない権利があるので、意外と重要な点です。
被告人にしか認められない権利の代表的なものが、保釈の申請です。保釈申請については、保釈の申請についてにて改めて説明します。

被疑者勾留から被告人勾留へ

厳密に言うと、勾留の種類が変わります。刑事事件の流れで説明したように、勾留は仮に延長をしても原則として最長で20日間までという厳格な期限が定められています。ただ、ここでいう勾留は、起訴前の勾留のことで、起訴された後の勾留は含みません。起訴された後は、今までの勾留はそのまま被告人勾留へとその性質を変え、勾留はそのまま継続されてしまいます。
そして、この被告人勾留の期間は、基本的には2ヶ月ですが、一定の場合には裁判が終了するまで延長されることも認められていますので、長期の身柄拘束がされてしまうことになります。だからこそ、被告人勾留から解放されるための保釈の申請が重要になるわけです。
また、勾留される場所も変わり、被疑者勾留の場合には警察署の留置場で勾留されますが、被告人勾留の場合には法務省が管轄する拘置所で勾留されることになります。これは、起訴された以上、いつまでも捜査機関の手中で勾留されているのはフェアではないという趣旨です。

前科が付く可能性が非常に高くなる

起訴されてしまった場合の有罪率は、起訴される割合(平成30年度は約31%)とは、大きく異なります。現在、起訴された場合の有罪率は、なんと99%以上にのぼり、起訴された以上はほぼ有罪になるという状況にあります。裁判により有罪となると、罰金刑以上の刑が科され、前科がついてしまいます。これは、たとえ執行猶予が付けられた判決の場合でも変わらず、刑の執行は猶予されますが、前科として経歴には残ってしまいます。

前科が付く可能性が非常に高くなる

前科がついてしまうと、私生活においていくつかの問題が生じます。

①職場を解雇される可能性がある

必ず解雇されるわけではありませんが、職場の就業規則によっては、解雇される場合が出てきます。

②就職・転職時に、希望の職場に採用されにくくなる

就職・転職時に提出する履歴書では、前科がある旨を記載しなければならない事が多いです。法的には申告しないといけない義務はないのですが、入社時に前科があることを告知せず後から前科があることが判明してしまうと、入社時の告知義務違反として解雇事由に当たると就業規則に記載されていることが多いためです。
また、弁護士や税理士・公務員などの職には一定の期間就けなくなってしまいます。

③離婚事由に当たる場合がある

結婚後に犯罪を犯してしまい前科がついたり、結婚前の前科を隠したまま結婚した場合、離婚事由に当たる可能性があります。どんな場合にでも離婚事由になるわけではありませんが、重大犯罪の場合は離婚事由に該当する可能性が大きいでしょう。

起訴された場合の弁護士の対応は?

起訴された場合、弁護士がどのような弁護活動を行っていくのかは、大きく分けて被告人が犯行を認めているケースと認めていないケースで変わってきます。

被告人が犯行を認めているケース

被告人が犯行を認めていて、起訴された通りに有罪になりそうな場合には、基本的には情状酌量を求めて量刑を少しでも軽くすることが弁護活動のメインの目的になります。懲役刑の判決が出ることが予想される場合には、少しでもその懲役期間が短くなるように努め、また、実刑判決が想定される場合には、執行猶予が付されるように最善を尽くします。

被告人が犯行を認めていないケース

逆に、被告人が犯行を認めていない場合には、被告人は無罪であると全面的に争うことになります。この場合は、検察から提出された物証や証言について、どこかで矛盾がないかを徹底的に検証します。また、その矛盾を突くために、自ら証拠を集めたり、犯行現場に赴いたりと、非常に多種な弁護活動をこなすことになります。
もっとも、先に説明したように、起訴された場合の有罪率は99%以上ですので、無罪を勝ち取るのは容易ではありません。