刑事事件

刑事事件の流れ

刑事事件のおおまかな流れ

警察・検察という捜査機関は、被害届の提出などをきっかけにして、犯罪が行われていそうな場合には捜査を開始します。その中で重要になってくるのは、身体の拘束を伴う逮捕以降の手続きでしょう(刑事事件の中には、身体の拘束を伴わないいわゆる「在宅事件」というものもありますが、ここでは割愛します)。
刑事事件では、法律でその手続が厳格に定められていて、基本的な流れは決まっています。これは、被疑者は判決が確定するまでは無罪だと推定されるので、その人権が侵害されるような強引・長期的な捜査が警察・検察によって行われないようにするためです。
基本的には以下のような流れになります。

捜査開始

警察は、聞き込み・目撃者の証言・被害者の証言・防犯カメラの画像・現場の遺留品等から、被疑者を絞っていきます。

逮捕から検察官への送致

警察は、捜査の中から被疑者を特定すると、裁判所に逮捕状を請求し、被疑者を通常逮捕します。逮捕は、逃亡・証拠隠滅の防止のために行われるものですが、実際にはここで警察による取り調べが行われます。
この逮捕については、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄や証拠を検察庁へ送らなければならないと、法律で決まっています。これはつまり、逮捕から48時間で、事件を処理する権限が警察から検察へと移るわけです。これを検察官送致(送検)といいます。
もっとも、逮捕後に行われる取り調べの結果、嫌疑がない等の事情で送検されず48時間以内に釈放される場合もあります。

送検された場合

検察官送致を受けた検察官は、その被疑者に本当に罪を犯した嫌疑があるのかを改めて検討します。その中で、警察で行われたように取り調べも行われます。この検察庁での検討時間は、送検から24時間と決まっています。
検察官は、さらなる身柄拘束の必要性があると判断した場合には、24時間以内に裁判所へ勾留請求を行います。また、その必要性がないと判断されれば、24時間以内に釈放されることもあります。

勾留

裁判所は、検察官が行った勾留請求の是非を検討し、その勾留請求に理由が認められると、被疑者はさらに長期間その身柄を拘束されます。勾留請求が認められなかった場合は、釈放されます。勾留の期間は、10日間と決められていますが、やむを得ない場合はさらに10日間再勾留されます(特殊な犯罪については5日間の再々勾留もあります)。
そうなると、基本的には逮捕から勾留までで最大23日間の身柄拘束がなされることになります。もっとも、これは一つの被疑事実についての期間で、重大事件になると2つ3つと被疑事実を分けて逮捕・勾留され、数ヶ月に渡る長期の身柄拘束をされる場合もあります。

起訴、不起訴の決定

検察官は、勾留の期間が満了するまでに、その被疑者の処分を決定します。その処分は、大きく分けると起訴と不起訴に分かれます。

起訴

起訴には2つの種類があります。1つめが略式起訴で、2つめが公判請求です。

①略式起訴

略式起訴とは、検察官が「この事件は最終的に罰金刑にするべきだな」と判断した場合(比較的軽めの事件など)、裁判所に正式な裁判手続きを申し立てずに、簡単な手続きで終わらせるものをいいます。
検察官に略式起訴されると、裁判所から略式命令が出され、罰金を支払うことになりますが、被疑者はそのまま釈放されます。

②公判請求

公判請求とは、検察官が裁判所へ裁判の開始を正式に申し立て、法廷で裁判が行われるようになります。この公判請求が一般的にイメージする裁判手続きです。なお、この時点から、身柄を拘束されている人の呼び方が、被疑者から被告人へと変わります。
公判請求が行われると、法廷にて法律で定められた通りの厳正な手続きに沿って裁判が行われ、最終的に判決によって被告人の処分を決定することになります。

不起訴

不起訴とは、被疑者を罪には問わないと検察官が判断することです。これは実質的に無罪とされたのと同じで、刑罰は課せられませんし、前科もつきません。
もっとも、不起訴になる場合でも、その不起訴の理由は以下のように3つに分かれています。

①嫌疑なし

罪を犯した疑いがないと判断された場合

②嫌疑不十分

罪を犯したと疑われるが、証拠が十分でないので起訴できない場合

③起訴猶予

罪を犯したと疑われ、証拠も十分揃っていて起訴できるが、あえてしない場合

公判

公判とは、弁護士・裁判官・検察官が出席している法廷にて、法律で定められた手順にしたがい、主張された事実・提出された証拠を吟味し、真実を明らかにする手続きをいいます。
公判手続は、以下のような流れで進んでいきます。

冒頭手続

冒頭手続は、人定質問により始まります。人定質問とは、裁判長が、被告人に対し、名前や生年月日、住所などを質問し、目の前にいる人が被告人本人であることを確認する手続きです。
次に、検察官が起訴状を朗読します。
その後、裁判長から、被告人に対して、黙秘権があることの告知がされ、検察官が読み上げた起訴上の内容を認めるかどうかを聞かれます。検察官の主張通りなのか、それとも事実は違うのか、ということを主張できるわけですので、ここでこれから始まっていく裁判のおおまかな流れが決まってきます(検察官の主張どおりに流れていくのか、完全に対立して正面から争っていくのか)。

証拠調べ手続

冒頭手続が終わると、次は証拠調べ手続に入ります。証拠調べ手続では、まず検察官が冒頭陳述により、どのような事実を証明したいのかを主張します。
そして次に、そこで主張した事実を証明するためにどのような証拠を提出したいのかを、証拠調べ請求で主張します。この証拠調べ請求の中で、今後どの証拠を吟味すべきかが決まります。
証拠調べ請求された証拠の中から吟味すべき証拠が決まると(証拠決定)、今度はその証拠について吟味していき、何が真実なのかという心証を裁判長が固めていきます。
この証拠調べ手続全般が最も重要で、時間のかかる手続きになります。

弁論手続

証拠調べ手続きが終わると、弁論手続きに入ります。
ここでは、検察官が「どのような刑を科すのが妥当か」という意見を言う論告・求刑が行われ、それに対して、弁護人から被告人の汲むべき事情の意見が主張されます。
そして最後に、「何か言いたいことはありますか」と、被告人に発言する機会が与えられます。

判決

そして、公判の最後には、判決が言い渡されます。
判決とは、被告人に対して、裁判所が決定した処分を言い渡すものです。
この判決は、大別すると2つに分かれます。

実刑判決

実刑判決とは、判決が下ると直ちに刑が執行されるものをいいます。例えば、懲役刑が言い渡された場合には、そのまま刑務所に収監されることになります。

執行猶予付判決

執行猶予付判決とは、刑の執行に猶予期間が付けられているものです。その猶予期間内に何事もなく模範的に過ごせていれば、宣告された刑の執行はされずに済むわけです。
もっとも、執行猶予期間中に他の犯罪を犯してしまうと、原則として執行猶予は取り消され、刑の執行がなされます。