借金問題

自己破産

自己破産とは

自己破産とは、これ以上借金を返済できない事を理由に、裁判所に破産を申し立てて破産決定をもらい、併せて債務の免責を求めることをいいます。自己破産の申し立てが裁判所に認められると、原則として債務が免責されますので、借金がチャラになり、これ以上返済する必要がなくなります。もっとも、厳密には自己破産手続きと免責手続きは別手続きですので、自己破産が認められても免責が認められないというケースもあります。この点については、以下で説明します。
なお、この自己破産を裁判所に申し立てるには、これ以上借金の支払が不能であるという支払不能の条件が必要となります。

チャラにならない債務もあるから注意!

借金がチャラになるといっても、全ての借金を返さなくてよくなるわけではありません。何があろうとも絶対返さなければならない債務というものが存在し、自己破産をしてもこの債務についてはそもそも免責されません。これを非免責債権といい、自己破産をした後でも支払い義務はなくなりません。

具体的には、例えば、住民税や固定資産税・自動車税などの税金や、国民健康保険や国民年金などの社会保険料は、この非免責債権に該当します。ですので、税金や社会保険料を滞納してしまっている場合には、たとえ自己破産をしたとしても、免責されず依然として支払い義務が残りますので、その後も支払いをしていかなければなりません。

免責されない場合もある

また、非免責債権でなければ自己破産をすればいつでも免責されるというわけでもありません。法律上、免責不許可事由というものが規定されていて、これに当てはまる場合には、裁判所が免責を許可しないこともあります。

どのような場合が免責不許可事由として規定されているかというと、例えば、ギャンブルや浪費で大きく借金を増やしてしまった場合や、クレジットカードのショッピング枠を現金化してしまった場合などが、これに該当します。

もっとも、免責不許可事由に該当したとしても、裁判所の裁量で「真摯に反省しているし今回だけだよ」と、免責を許可してくれることもあります。これを裁量免責といいます。

しかしながら、裁判所はいつでも裁量で免責をくれるわけではないので、場合によっては、自己破産をしたけれど免責はされずに借金が全額残ってしまったという最悪の状況になることも実際にあります。免責不許可事由に該当するようなお金の使い方をしてしまっていた場合は、気づいた時点ですぐに慎み、それ以降は絶対にそのようなことはやめましょう。

自己破産のメリット

自己破産をする場合のメリットには、どのようなものがあるでしょうか。それは、主に次のとおりです。

①借金がチャラになる

まずは、やはり免責決定をもらうことで借金がチャラになる点が、最も大きいメリットになります。自己破産手続きは、この免責決定をもらって借金をチャラにするために行うものと言ってもいいです。ただ、前述した通り、自己破産決定が出されても肝心の免責が不許可になってしまうケースもありますので、そこは注意が必要です。

②安定した収入がなくても申し立てが可能

自己破産手続きは、安定した収入がない場合でも、申し立てることが可能です。同じ債務整理においても、任意整理個人再生という方法をとる場合には、安定した収入がなければできません。これらと比べて、収入がない人でも申し立てをできる点が、自己破産のメリットになります。

自己破産のデメリット

では、反対に、自己破産をするデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。一般的には次のとおりです。

①財産の多くを手放さなればならない

自己破産をする場合、財産の多くを失うことになってしまいます。
たとえば、土地や住宅・ローンが残っている車については、全て手放さなければなりません。手元に残せるものは、20万円以下の預貯金や99万円以下の現金など、生活に最低限必要なものだけとなります。

②官報への掲載

自己破産をすると、官報に氏名と住所が掲載されてしまいます。
もっとも、官報をいちいち見る人は多くありませんし、インターネットにおいて無料で見られるのは直近の30日分だけですので、官報の記載から周りの人に知られてしまう可能性はかなり低いです。

③一定期間、資格の制限がある

自己破産の申し立てをして破産手続きが開始されると、一定の期間、特定の資格の利用が制限されてしまいます。具体的には、弁護士や公認会計士、税理士などがそれに該当します。
ただ、これはよく勘違いされている点ですが、この制約はあくまで自己破産手続き中だけのものであって、免責許可が下りれば解除されます。つまりは、数カ月間のみの制約ということです。

④ブラックリストへの掲載

自己破産をした場合、任意整理や個人再生をした場合と同様に、信用情報機関に自己破産をした旨が登録されてしまいます。この場合、5〜10年間は、新たな借金やクレジットカードの作成ができなくなります。

自己破産の流れ

自己破産手続きは、大きく分けて同時廃止事件と管財事件の2つに分かれます。申し立てる破産手続きがどちらに分類されるかは、債務者にどれだけの財産があるかを基準にして決まります。ほとんど財産がない場合は同時廃止事件になりますが、一定以上の財産がある場合には管財事件となります。

そして、この同時廃止事件と管財事件とでは、その手続の流れや手続きにかかる期間も変わってきます(裁判所に収める予納金という費用についても差が出てきます)。
そこで、自己破産手続きの流れについては、同時廃止事件と管財事件とに分けて説明します。

注意

なお、破産申立の手続きについては、その運用が裁判所によって異なりますので注意して下さい(地域によっては、必ずしも以下の流れの通りだとは限りません)。より正確に知りたい場合は、弁護士に相談することが確実です。

同時廃止事件の場合

1.委任

法律事務所に自己破産の相談・依頼をします。

2.受任通知の送付、申立書類の準備

法律事務所から、債権者に対して、自己破産の委任を受けた旨の通知書(受任通知)を送付します。この受任通知により、債権者からの取り立て・請求がストップします。

また、自己破産の申し立てに必要な書類を準備します。申し立てにあたっては、様々な書類が必要となりますので、実際には債務者本人にも多くの協力をしてもらうことになります。債務者本人にとっては、ここが一番の頑張りどころです。

3.破産手続きの申立

準備した書類を弁護士が裁判所に持参し、破産手続きを申し立てます。
※東京地方裁判所等の事件処理数の多い一部の裁判所では、即日面接という制度を導入しているところもあります。もっとも、愛知県内の裁判所では、導入されていません。

4.補充事項等照会書

裁判所が気になる点について、補完的に説明するよう補充事項等照会書という書面にて指示が出されます(愛知県内の裁判所の運用)。

5.破産手続開始決定と破産手続廃止決定

裁判所から、破産手続開始決定が出されます。また、同時廃止事件の場合には、これと同時に破産手続廃止決定も出されます。

6.免責許可決定・免責不許可決定

免責が許可される場合には、裁判所から免責許可決定が下ります。

7.免責許可決定の確定

免責許可決定からおよそ1ヶ月後に、免責許可決定が確定します。これにより、ようやく借金を返済する必要がなくなります。

管財事件の場合

1.委任

同時廃止の場合と同様、法律事務所に自己破産の相談・依頼をします。

2.受任通知の送付、申立書類の準備

同時廃止の場合と同様に、債権者に対して、受任通知を送付し、この受任通知により債権者からの取り立て・請求がストップします。
また、自己破産の申し立てに必要な書類を準備します。

3.破産手続きの申立

同時廃止の場合と同じく、準備した書類を弁護士が裁判所に持参し、破産手続きを申し立てます。
※愛知県内の裁判所では、即日面接は導入されていません。

4.補充事項等照会書

この点についても同時廃止の場合と同じで、裁判所が気になる点について、補完的に説明するよう補充事項等照会書という書面にて指示が出されます(愛知県内の裁判所の運用)。

5.破産手続開始決定と破産管財人の選任

この段階から、同時廃止事件とは手続きが異なってきます。裁判所から、破産手続開始決定が出され、それと同時に破産管財人が選任されます。

6.破産管財人による調査と打ち合わせ

選任された破産管財人が、債務者の財産の状況を調査し、免責不許可事由がないかを調査します。また、債務者本人と打ち合わせをして、なぜ破産に至ったか等の説明を求めます。

7.債権者集会

裁判所において、債権者集会が開かれます。債権者集会とは、破産管財人が債権者や裁判所に調査した財産の状況等を説明し、債権者への配当があるのかを報告する場です。また、免責審尋もこの中で行われます。なお、債権者集会には、債務者も出席しなければなりません。

8.破産手続きの終了

配当がある場合には破産手続終結決定が出され、配当がない場合には破産手続廃止決定が出されます。

9.免責許可決定・免責不許可決定

免責が許可される場合には、裁判所から免責許可決定が下ります。

10.免責許可決定の確定

免責許可決定からおよそ1ヶ月後に、免責許可決定が確定します。これにより、ようやく借金を返済する必要がなくなります。