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知的財産権

知的財産権

事業を営む上では、独自のアイデアやデザイン等が経営に大きな価値を持つことがあります。しかし、これら目に見える実体がないものは、その性質上簡単にコピーできてしまう上に、外部への流出の危険性も高く、法律によって制度として保護しておかなければ健全な競争社会が育まれません。
そのため、法律はこれらの一部を権利として認め、様々な保護を図っています。そして、そのように保護されている権利を総称して、いわゆる「知的財産権」と呼んでいます。
ここでは、その知的財産権の中でも、事業を営むにおいて特に重要となるもので、かつ、登録制度のある商標権・特許権について説明します。

商標権

商標の定義は、商標法に詳しく規定されていますが、簡単にいえば、商品やサービスについて使用する文字やデザイン等のことを商標と呼んでいます。
商標法は、これらについて、特許庁へ出願・登録することにより、独占的に使用することができる権利を与えています。商標権とは、この商標についての独占的な利用権のことをいいます。

商標権を取得するメリット

この商標の代表的な具体例としては、商品そのものをあらわす単語、すなわち商品名があげられます。
たとえばこの商品名について、誰もが自由に使えるということにすれば、どういうことになるでしょうか。事業を行う企業としては、自社のオリジナルの商品を開発し、研究開発によりそのクオリティーを高め、マーケティング戦略により唯一無二の商品としてブランド価値を付与し、世に広めようとします。そうやって消費者から絶対的な信頼を得る商品としての価値を築き上げたとしても、その商品名を他社も使えることになれば、テキトーに作った見た目だけ似ている低クオリティの商品に同一の名前を付け、荒稼ぎしようとする企業が出てくるでしょう。
そうすれば、オリジナル商品の評判が落ちてしまい、その企業の利益を害されます。また、消費者にとっても予期していない粗悪品を掴まされ、思ってもみない不利益を被る結果になってしまいます。
つまりは、商標を独占的に利用できるということは、商品やサービスにブランド価値を築くことができる可能性を取得し、それによりひいては企業の価値を高め、それを守ることができるということです。

法律による厚い保護が与えられる

商標権を取得すると、その商標を独占して使用できると共に、先に述べたような他社や他人からの侵害行為を抑止し、排除することができることになります。
具体的には、まず、商標権の侵害行為には、刑事罰が科されていて、これにより侵害の抑止が図られています。
また、仮に商標権の侵害があった場合には、侵害行為の差止を請求し、その侵害行為をやめさせることができます。
さらに、商標権が侵害されたことにより、相手にその損害賠償を請求しようとする場合、その損害額について、商標法の特別の推定規定が適用されます。ですので、その受けた損害の金額について、いちいち立証する必要がないため、請求する側の立証の負担が軽減されるという効果もあります。
このように、法的な側面から見ても、商標権を取得することには大きなメリットがあるといえるでしょう。

特許権

特許権について規定している特許法は、「発明」について保護している法律です。そして、ここでいう「発明」とは、少し難しいですが「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうとされています。
特許権とは、このような発明について、独占的に使用することができる権利のことをいいます。この特許権を取得するためには、発明を特許庁へ出願し、そして登録される必要があります。

特許権を取得するメリット

発明が特許として登録されると、発明者はこの発明を独占的に使用する権利を手に入れます。
そして、この権利を実効性のあるものにするため、特許法は、いくつかの法的な効果を定めています。
例えば、特許法は、特許権の侵害行為について、刑事罰を科すことでその抑止を図っています。
また、特許権の侵害行為に対して、差し止め請求を認めていて、特許権者はその侵害行為をやめさせることもできます。
さらに、特許法は損害額に特別の推定規定を置いていて、特許権侵害についての損害賠償請求をする際の立証の負担の軽減を図っています。
これらの点については、その内容は商標権の場合と同様です。
会社が事業の中で発明を行う場合、通常は多額の金銭的投資や、膨大な人的投資を行うことになります。ですので、このような投資をして、苦労してようやく完成した発明を勝手に使われてしまっては、事業は立ち行きません。これを防ぐことができるという意味で、特許権を得ることには大きなメリットがあるといえるでしょう。

他の人に有償で使ってもらうことも可能

また、発明を独占的に利用できるということは、その発明を他者に有料で利用してもらうことにより、対価を得ることができる場合もあります。
例えば、自社である発明が完成し、それを特許として登録することで特許権を取得したけれど、実際には自社の事業の中ではあまり役に立たず、全く利用していないというケースがあります。しかし、この発明が、他社にとっても無価値であるとは限りません。発明した自社にとっては利用価値がなくとも、他の事業者には重要な発明であるような場合、他社としてはお金を払ってでもその発明を使用したいわけです。
これも特許権を取得する重要なメリットといえるでしょう。

不正競争防止法等による保護

上述のように、商標権についても特許権についても、取得できた場合にはとても強力な効果を発揮します。しかし、申請と登録という事前の手続を必要とする関係上、他者からの侵害行為に時間的に間に合わない場合や、費用や労力の面からあえてこれらの権利を取得しない場合もあり得るでしょう。
もっとも、商標権や特許権がないからといって、商品名等や発明が一切保護されないというわけではありません。例えば、不正競争防止法や民法などの他の法律により、一定の保護や救済は図られています。
そうはいっても、これらの法律では、保護される範囲が限定的であったり、要件が厳格であったりと、なかなか大きなデメリットが存在しているのも事実です。
ですので、自社の事業にとって重要なものである場合については、やはり商標権や特許権の取得を検討した方がよいでしょう。