刑事事件

保釈の申請について

保釈について

保釈とは

保釈とは、被告人について、保釈金の納付を条件に、勾留を一時的に停止して釈放することをいいます。
この保釈には、厳密には3つの種類があって、権利保釈、裁量保釈、義務的保釈に分かれています。

①権利保釈

保釈は、申請があった場合、除外事由に該当しない限り、保釈されなければならないと法律に規定されています。これを権利保釈といいます。

②裁量保釈

裁量保釈とは、①権利保釈が認められない場合に、裁判所が諸般の事情を考慮して、必要だと考えた時にその裁量で保釈を許可するものです。

③義務的保釈

義務的保釈とは、勾留による身体拘束があまりに長くなってしまった場合に、裁判所が保釈を認めるというものです。もっとも、実際にはほとんど認められませんので、あまり重要ではありません。

この3つの保釈の関係は、次のようになります。
保釈の申請がされた場合、裁判所はまずは権利保釈を検討します(もっとも、控訴審の場合、権利保釈はありません)。その権利保釈が認められなければ、裁量保釈を検討します。仮に権利保釈も裁量保釈も認められない場合でも、義務的保釈が検討されますが、これはほぼ認められません。

保釈申請はいつからできるか

保釈は、あくまで被告人について認められている権利ですので、起訴されてからでなければ保釈の申請はできません。
ですので、起訴される前で勾留されている状況では、釈放を求めるには、準抗告という方法によるしかありません。もっとも、この準抗告は、裁判所にあまり認めてもらえません。

保釈と釈放の違い

保釈と釈放という言葉は、共によく耳にする言葉ですが、厳密にはどう違うのでしょうか。
保釈とは、法律上の制度のことです。上記で説明したとおり、「被告人を保釈金の支払いを条件に釈放する制度」のことで、法律上の用語です。
他方、釈放というのは、法律用語ではなく一般的な日本語としての言葉であり、「身柄を解放する」などの言い回しと同じ意味です。

保釈申請の流れ

保釈申請書の提出

まず、(通常は弁護士が)裁判所に保釈申請書を提出します。

検察官の意見提出

保釈に対し、検察官が書面で意見を提出します。
その意見は、ざっくり言えば、「保釈してもいい」、「保釈すべきでない」、「判断は裁判官に任せます」という3つのどれかになります。

保釈についての決定

保釈を認めるべきか、認めないかの決定が裁判所から出されます。
保釈を認める場合は保釈許可決定が出されますが、保釈が認められない場合は保釈却下決定が出されます。

保釈金の納付

保釈許可決定が出された場合、保釈決定書に記された保釈金の金額を裁判所に納付します。

保釈

保釈金を納付した後に、被告人が保釈されます。

保釈が認められる場合

権利保釈、裁量保釈の検討

保釈の申請がされた場合、まず裁判所は権利保釈を検討した上で、権利保釈が認められなければ裁量保釈を検討します。
ただ、権利保釈については、「原則として保釈されなければならないが、例外的な場合は認めなくてもいいです。例外的な場合(除外事由)は次の通りです。」という形式で、法律で除外事由が規定されていますが、ぱっと見てもわかりにくいです。 ですので、まずはあまり細かく見るよりも、

  1. 重大事件の場合は保釈されない
  2. 重大事件の前科があると保釈されない
  3. 常習犯は保釈されない
  4. 証拠隠滅の恐れがある場合は保釈されない
  5. 事件関係者を脅す可能性がある場合は保釈されない
  6. 氏名・住所が不明の場合は保釈されない

と、ざっくり把握しておくとよいでしょう。 そして、権利保釈が認められない場合には、裁量保釈が検討されます。
裁量保釈が認められるかが検討される場合、裁判所が保釈をすべきかどうかを裁量で判断することになります。もっとも、そもそも権利保釈が認められない状況(除外事由に該当する状況)にあるわけですので、その上でなお保釈を許可するだけの特別な事情が必要となります。そして、この特別な事情があるかどうかは、事件の性質や内容、被告人の経歴や前科など、非常に多くの要素を考慮して、判断されます。

身元引受人が必要なことが多い

身元引受人とは、保釈された後に被告人を監督し、法廷への出廷や保釈決定に付された条件を守らせる人のことです。保釈が認められるためには、身元引受人が必要になることが通常です。身元引受人が見つからない場合には、保釈申請を認めてもらうことはなかなか難しくなります。
身元引受人になれる人には、特に制限はありませんが、上記の趣旨に合う人でなければいけません。
一般的には、家族や親族に身元引受人をお願いすることが多いですが、適当な方がいない場合には、職場の上司にお願いすることもあります。

保釈が認められる割合

保釈が認められる割合を保釈率といいますが、この保釈率は近年増加傾向にあります。平成20年頃は約15%ほどだったのですが、平成30年にはおよそ33%でした。とはいっても、半数にも及ばないことからもわかる通り、保釈を認めてもらうのは決して容易ではありません。
ただ、現在は保釈中に逃亡する被告人のことが社会的に問題視されていて、新たな法整備が求められている状況にありますので、今後保釈率は減っていくかもしれません。

保釈金について

保釈金とは

保釈金とは、正式な名称を保釈保証金といい、保釈が許可された場合に、保釈をしてもらう条件として裁判所に納付する費用です。
「保釈が許可された場合に支払う費用」であって、「保釈金を支払うから許可が下りる」わけではない点には、注意が必要です。 この保釈金を裁判所に納付したことが確認され次第、被告人は勾留されている施設から実際に出てこられるようになります。

保釈金はいくらかかる?

保釈金の金額は、被告人の資産や犯罪の内容等を考慮して決定されます。基本的には、150万円〜250万円ほどになる場合が多いですが、300万円を超えてくる場合もあります。逆に、100万円を下回ることは通常ありません。

保釈金が用意できない場合

保釈金は高額になることも多く、なかなか簡単に用意できない場合も多いです。その場合、保釈金を立て替えてくれる団体や、保釈保証書というものを発行してくれる団体がありますので、弁護士に相談してみましょう。

支払った保釈金は最終的にどうなる?

支払った保釈金については、保釈金があくまで被告人を出廷させるための担保のようなものですので、裁判が終了すれば全額戻ってきます。もっとも、保釈中に逃走したり、証拠の隠滅を行ったり、下記の保釈決定時に裁判所から課された制限に違反すると、没収されてしまいます。

保釈された後の制限

保釈されたからと言って、完全に自由な日常生活に戻れるわけではありません。
保釈決定には条件が付されることが一般的で、「事件関係者との接触の禁止」や、住む場所を指定される「制限住居」や、「裁判所からの呼び出しへの出頭義務」等の条件を指定されることが多いです。
これらの条件に違反してしまった場合、保釈金が没収されてしまいます。また、せっかく許可された保釈自体が取り消され、再度勾留が開始してしまうことになります。また、そのような約束を守らない態度が、判決へ悪影響を及ぼすことも確実です。
決して保釈決定に付けられた条件を軽んじることがないようにしましょう。