離婚問題

離婚できる場合とできない場合

どのような場合に離婚できるの?

もし離婚をしたいと思ったとき、どのような場合であれば離婚できるのでしょうか。実は、夫婦の一方が離婚したいと思っているとしても、どんな場合でも離婚ができるわけではありません。
離婚が認められる場合については、大きく2つに分かれます。1つ目は、夫婦間で離婚の合意がある場合で、2つ目が、夫婦間に離婚の合意がないが法定離婚事由が存在する場合です。
以下では、これらについてもう少し具体的に説明します。

合意がある場合

まずは、夫婦間で離婚についての合意があれば、それだけで離婚が可能です。この場合は、特に他に理由がなくても、夫婦がお互い離婚することに納得しているわけですから、それでよしとされているわけです。
離婚の合意があるということは、離婚手続きの流れで説明した離婚の種類の中の協議離婚ないしは調停離婚に該当することになります。

法定離婚事由がある場合

他方、夫婦間で離婚についての合意ができない場合(協議離婚・調停離婚が成立しない場合)、離婚訴訟で離婚の是非を争うことになります。この場合には、法定離婚事由が必要となります。
法定離婚事由とは、法律が「離婚の合意がない場合、次のような場合にだけ離婚訴訟が可能です」という離婚の原因を並べたものです。裁判で法定離婚事由があると認められれば、原則として離婚ができますし、法定離婚事由がないと認定されると離婚できないということになります。
では、この法定離婚事由には、どのようなものがあるのでしょうか。具体的には、以下のものがあります。

①不貞行為があった場合

夫または妻が、第三者と浮気・不倫をし、不貞行為を行った場合には、法定離婚事由の存在が認められます。なお、この場合は、原則として、浮気をした夫・妻とその浮気相手に対して、慰謝料を請求することが可能です。

②悪意で遺棄されたとき

夫または妻から、悪意で遺棄された場合は、法定離婚事由の存在が認められます。
では、ここでいう「悪意で遺棄される」とは、何を意味するのでしょうか。
そもそも、民法では、夫婦は同居し、互いに協力し、扶助しなければならないと定められています。平たく言えば、夫婦は協力し助け合い共同生活を送る義務があるということです。ですので、「悪意で遺棄される」とは、「相手の積極的な意思で」「夫婦としての協力的な共同生活を放棄された場合」ということができます。

少しイメージがわきにくいかもしれませんが、たとえば、具体的に「悪意の遺棄」に当たるとされるケースには、次のものがあります。

EX.

  • 妻または夫の一方の所得が圧倒的に多いにもかかわらず、他方に生活費を渡さないケース
  • 妻・夫を家から追い出してしまうケース(自ら家を出た場合は含まない)
  • 理由もなく家に帰らないケース

③生死が3年以上明らかでないとき

夫または妻が、3年以上生きているのか死んでいるのかわからない時は、法定離婚事由に該当します。

④強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

夫または妻が、強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合には、法定離婚事由に当てはまります。
ここでいう「強度の精神病にかかっている」とは、統合失調症や躁うつ病などの精神病により、夫婦としての共同生活が送れなくなってしまっている状態が継続していることをいいます。つまり、夫婦生活が送れないほどの強度の精神病が一定期間継続していて、さらに今後の回復の可能性がないことが必要となりますので、「配偶者がうつ病と診断されたから即座に離婚できる」という単純な問題ではありません。また、精神病になってしまった夫・妻の今後の生活の見通しはどうなのかという点も大切なことですので、この法定離婚事由については、実務上かなり慎重に判断されることになります。

⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

夫と妻の間に、その他これ以上夫婦としてやっていけない重大な問題がある場合も、法定離婚事由に該当します。
ただ、上記①〜④までは具体的な場面が規定されていましたが、この⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」というのは、「その他」と書かれていることからしても、抽象的な規定であることがわかるかと思います。つまり、この⑤の規定は、千差万別ある実社会で問題となる離婚原因の受け皿として機能することを期待され、定められている法定離婚事由となります。ですので、実務において、上記①〜④までに当てはまらないケースについて、「今回のケースは離婚できるのだろうか?」と検討する場合、この⑤に該当するかどうかを考えることになります。

実務上、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と認められることが多いケースについては、次のようなものが挙げられます。

EX.

  • 長期に渡って夫婦が別居生活を送っている場合
  • DVやモラルハラスメントが常態的に行われている場合
  • ギャンブルや浪費で借金を重ね、通常の日常生活を送れない状態が続いている場合

【知っておきたい!】

実際に、夫婦間で離婚したい原因として最も多く挙げられる「価値観の相違、性格の不一致」は、ご覧のとおり①〜④の法定離婚事由には含まれていません。そうなると、この場合は、「価値観の相違、性格の不一致」が⑤「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」といえるかが問題となりますが、基本的にはこれだけでは⑤に当てはまらないとされています。ですので、夫婦間で離婚の合意がない場合に「価値観の相違、性格の不一致」だけを原因として離婚請求をすることは原則としてできません。離婚をするためには、別居状態が長期に渡って続いている等、他の離婚原因により既に夫婦の婚姻関係が実質的に破綻しているといえることが必要です。

例外的に離婚が認められない場合

もっとも、上記のような法定離婚事由が存在する場合であっても、例外的に離婚が認められない場合があります。それは、「有責配偶者からの離婚請求」と呼ばれるもので、離婚の原因を作った夫・妻の側から、「離婚したい」と請求する場合です。これは、例えば、不倫をした夫が、「不倫相手と結婚したいから離婚してくれ」と妻に離婚請求をするようなケースが考えられます。このような場合、原則としては、原因を作った側からの離婚請求は認められません。
もっとも、長期間(例えば10年弱)に渡って別居状態が続いている等、原因を作られた側としても夫婦生活をもはや継続するつもりがないと認められる場合には、有責者からの離婚請求が認められる場合もあります。