売買契約の解除
不動産の売買契約であっても、契約を解除する際の手続きは、他の契約における解除手続きと変わりません。
すなわち、原則として、①相手に対して、「相当の期間までに、まだ履行されていない債務を早く行なってくれ」という通知を出し(債務履行の催告)、②相手が相当の期間を経過しても、なお債務を履行しないことを確認した上で、契約を解除する旨を通知する(契約解除の意思表示)ことで、契約は解除されます。
【契約を解除するために必要な手続き】
① 相手に対して、「相当の期限までに、まだ履行されていない債務を早く行なってくれ」という通知を出す(債務履行の催告)
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② 相手が相当の期限を経過しても、なお債務を履行しないことを確認した上で、契約を解除する旨を通知する(契約解除の意思表示)
では、瑕疵がある場合には解除できるの?
買った土地や建物に瑕疵があることを理由に不動産の売買契約を解除する場合、売り主としては、売買契約上の本来の売主の債務を履行し終わっていることが通常なので、買い主としては、「売買契約の債務をちゃんと履行してくれ。履行してくれないと解除するぞ」という主張はできません。
なぜなら、売買契約における本来の売り主の債務とは、売った土地や建物の所有権を買い主に移転させることをいうので、買主が買った土地や建物の瑕疵に気づいたということは、基本的にはその移転は終わっているはずだからです。
そこで、買い主としては、まず、不動産の瑕疵の修補等を求める追完請求や、瑕疵による代金減額請求に応じるよう催告することになります(追完請求や代金減額請求については「不動産の瑕疵」を参照)。
そして、売り主が、期限までに瑕疵の修補や代金減額等に応じない場合には、売買契約を解除できることになります。
契約を解除できない場合もある
しかし、逆に言うと、上記のように買い主が追完請求や代金減額請求をした際に、売主が瑕疵の修補や代金減額に素直に応じた場合、買主はこの売買契約を解除することができません。
特に「相当な期間」との関係で、解除できない場合も多い
すこし細かい話になりますが、上記の①「早く債務を履行してくれ」という債務履行の催告の際に指定する期限は、「売主がその債務を履行するためにはこれくらいの期間がかかるだろう」という客観的に「相当の期間」でなければなりません。仮に、この①債務履行の催告において、この「相当の期間」よりも短い期限を指定したとしても、債務の履行に必要な「相当の期間」が経過するまでは、解除はできません。
また、購入した不動産に瑕疵があった場合、買主がその瑕疵の修補をするよう催告したとすると、不動産の瑕疵修補にはそれ相当の大掛かりな工事が必要となりますので、契約解除までの「相当の期間」はおのずと長くなります。
そのため、買った土地建物に瑕疵があったことを理由にその売買契約を解除することを希望し、瑕疵の修補や代金減額の催告とこれがなかった場合の契約解除の意思表示を通知したとしても、売主の対応次第では、まだ「相当な期間」が経過していないと判断され、契約を解除できないことがあり得ます。
催告をせずにいきなり契約の解除をすることはできるの?
この債務履行の催告なしに売買契約を解除する方法は皆無ではありませんが、そのためには、土地や建物の瑕疵の存在により、買主が売買契約をした目的を達成できないことが認められなければなりません。
しかし、売買契約における買主の基本的な目的は、目的物である商品の所有権を得ることであり、これは瑕疵のある土地や建物であっても実現可能です。とすると、ストレートに考えると、たとえ瑕疵があるとはいっても、土地や建物を受け取っている以上、売買契約をした目的を達成できないと言うことはできません。
〜変化球として、利用目的が決まっていたと主張する方法が考えられるけど〜
そこで、買主としては、売買契約において、この本来の目的以外に利用目的(例えば、この土地は住むために買う、等)が決まっていて、買った土地や建物に瑕疵がある現状では、この利用目的が達成できないと主張し、それを証明することが考えられます。
しかし、不動産の売買契約書では、この利用目的等が明記されていることは珍しく、利用目的の存在を証明することが困難なケースが多いです。
また、利用目的が証明できたとしても、瑕疵のある現状ではその目的が達成できないことを説明するためには、建築設計の専門的見地が必要不可欠であり、一般の方では極めて困難です。
ですので、基本的には、催告なしの売買契約の解除が認められるケースは、極めて少ないと言わざるを得ません。