離婚問題

離婚にあたっての子供をめぐる問題

離婚時の子供に関する問題

夫婦が離婚をする場合、夫婦間での「お金をめぐる問題」ももちろん大事ですが、それ以上に重大なのは子供をめぐる問題です。夫婦間に子供がいる場合、親の離婚は子供の心や今後の成長にどうしても影響を与えてしまいます。
離婚をする際には、子供に関して決めておかなければならない代表的な事柄が2つあります。それが、「親権者を誰にするか」という問題と、「面会交流の取り決めをどうするか」という問題です。この2つは、離婚による子供への悪影響を最大限に抑えるためにも非常に重要なものになりますので、夫婦の双方がしっかりと理解しておく必要があります。
ここでは、以下これらの問題について説明します。

親権・監護権

親権とは、未成年の子供に対して、養育者として監護・教育し、その財産を管理する権利と義務を負うことをいいます。
そもそも、親権は、婚姻中は夫・妻が共同して行使することになっています(共同親権の原則)。しかし、離婚をする場合には、「夫婦のどちらかを親権者として決めなければならない」と法律で定められています。これはつまり、夫婦の片方は、今まで持っていた子供に対する親権を失うことを意味しています。そこで、離婚時には夫婦のどちらが親権者となるのかが特に問題となるわけです。

親権の内容

親権とは、上記の通り子供の世話をし、教育する権利ですが、その具体的な内容は次のように大きく2つに分かれます。

①身上監護権

身上監護権とは、子供の監護と教育をする権利・義務のことをいいます(監護権と呼ばれることも多いです)。これはもっとざっくり言えば、子供と一緒に生活し、子供の身の回りの世話をし、毎日学校に行かせる権利と義務のことです。
そして、このように子供の日々の身の回りの世話をしっかりできるように、民法は、身上監護権には次の権利があることを明記しています(これらの権利があるおかげで、身上監護権がより実効的なものになるわけです)。

  • 居所指定権 子供の住むところを指定する権利(これが子供と同居できる根拠です)
  • 懲戒権 子供を叱り、しつける権利
  • 職業許可権 子供が職業を営む(アルバイト勤務も含む)のを許可できる権利

②財産管理権

財産管理権とは、子供の財産を管理し、かつ、子供の財産に関する行為を全面的に子供に代わって行うことのできる権利をいいます。具体的には、子供の通帳を管理したり、子供が許可なく例えばゲームソフトを中古屋に売却をした場合にそれを事後的に同意することもできます。

親権者の決め方

離婚をする場合には、必ず夫婦のどちらかを親権者に決めなければいけません。では、親権者はどのように決まるのでしょうか。
まず、法律上は、基本的には夫婦間での話し合いにより決めることになっています。ただ、なかなか夫婦2人だけでの話し合いでは決まらないこともありますので、その場合は家庭裁判所に申し立てれば調停により第三者を交えた協議の場を設けてくれます。

裁判所が決めるときの基準は?

もっとも、調停によっても、夫婦のどちらも譲らずに親権者が決まらないこともあります。その場合は、家庭裁判所に審判・訴訟によって親権者を決めてもらうしかありません。
では、その場合、家庭裁判所はどのような基準で親権者を決定するのでしょうか。
この点については、それぞれの事案ごとに様々な事情を考慮し、多角的に検討した上で、「どちらを親権者にすれば、より子供の利益になるか」という基準で判断されます。

子供の利益を判断するための4つの原則

「どちらを親権者にすれば、より子供の利益になるか」という基準を判断する上で、裁判所が重視する4つの原則があります。
それは次のとおりです。

①継続性の原則

継続性の原則とは、現状を尊重するということです。子供を取り巻く現在の安定した環境をできる限りそのまま継続させることが、子供を動揺させないことに繋がる、という考えに基づいています。

②子供の意思の尊重

子供の意思がどうなのかということは、判断の一つの指針として利用されます。どうすれば子供のためになるかを考えるわけですから、子供自身が今後どうしたいと考えているのかを聞くのは極めて重要です。もっとも、その子供の意思がどれだけ重視されるのかは、子供の年齢により大きく異なります。

③兄弟姉妹の不分離

兄弟姉妹の不分離とは、兄弟姉妹が一緒に暮らしている場合には、それを離れ離れにはすべきではないという原則です。もっとも、兄弟姉妹がずっと別々に暮らしているような場合には当てはまりませんし、既に子供の年齢が高い場合にはそこまで重視されるものではありません。

④母親優先の基準

母親優先の基準とは、乳幼児の場合など、子供の年齢が低い場合には、母親を優先すべきという考え方です。ただ、近年ではその根拠が不明確だという批判から、あまり重視はされなくなってきています。

裁判所が考慮する様々な事情

上記の4原則を念頭に置きながら、事案ごとの事情から、「どちらを親権者にすればより子供の利益になるのか」を判断するわけですが、そのときに実務上頻繁に考慮される事情には、以下のものがあります。

(ア)夫・妻の事情

監護に対する意欲、職業・収入、保有する資産状況、日頃の勤務時間、健康状態、自身の親からの援助の可能性(何かあったときに親を頼れるか)、など

(イ)子供の事情

子供の年齢、兄弟姉妹との関係、など

【知っておきたい!】

上記④母親優先の原則は、近年ではあまり重視されなくなってきています。しかし、未だに日本では、子供がまだ小さい場合には、母親が率先して育休を取る・パートタイムでの仕事に切り替えることにより、母親が中心に日頃の子供の面倒を見て、父親はそれを手伝うという家庭が多いのが現状です。そのような状況から、特に子供がまだ幼い場合には、①継続性の原則により、結果として母親が親権者に選ばれる場合が多いです。

親権者と監護権者とを別にする場合

上記のとおり、親権の内容には、身上監護権(監護権)が含まれていますので、原則として、親権者が子供の世話をし、教育を受けさせるという形でその監護権を行使します。
しかし、なかには親権者と監護権者を別々にするという例外的な取り扱いをすることもあります。例えば、「夫を親権者とし、妻を監護権者とする」というような場合です。裁判所がこのような決定をする背景には、夫も妻もどちらも親権者になりたいと強く主張している場合にその折り合いをつけるため、という事情があります。
ただ、夫・妻が最も望むであろう子供と同居できる権利については、居所指定権をその一内容とする監護権に付随していますので、監護権のない親権には求めているような実益はあまりありません。
ですので、親権者と監護権者を分けるという取り扱いは、あくまで例外的なものであり、裁判所としては避けようとしていることが窺えます。

面会交流

上記のとおり、離婚をする場合には、夫婦の一方のみを親権者とすることになっていますので、夫婦の他方は子供と一緒には暮らせなくなってしまいます。そこで、親権者とならなかった親が、定期的に子供と会い、一緒に遊んだり、食事に行ったりすることが認められています。これを面会交流といいます。
面会交流は、親権者ではない親のための権利であるというイメージがあるかもしれませんが、そうではなく、あくまで子供の利益(子の福祉)のために認められている制度です。面会交流が法的に認められている根拠は、子供にとっては、たとえ両親が離婚して親権がなくなろうとも自分の親であることに変わりはないのですから、自分の親に定期的に会うことが子供の心身の健全な成長には欠かせないと、一般的には理解されている点にあります。

面会交流の決め方

離婚後の面会交流をどのように行うのかについては、原則として、夫婦間での話し合いで決まります。話し合いをする時期については、離婚前でも離婚後でもいいのですが、離婚後ですとなかなか夫婦で話をする機会がなくなりますので、離婚前にする方がよいでしょう。
なお、離婚をする際の親権者の決定と同じく、当事者だけの話し合いで決められない場合には、裁判所が調停・審判により介入することになります。

話し合いで決めておくべきこと

面会交流をどのように行うかを決める時に考える事柄としては、

  1. 毎月何回行うのか(頻度)
  2. 何時から何時までにするか(時間)
  3. どこで子供を引き渡すか(場所)
  4. たまには泊まりもできるようにするか(宿泊)

等があります。
もっとも、あまり細かく取り決めてしまうと、子供の成長による今後の状況の変化に柔軟に対応できなくなります。そうかと言って、ある程度の決まりを作っておかないと、後々のトラブルになってしまいます。結局のところ、上記①だけを決めておくのか、それとも①〜④まで全て決めるのか、はたまた、それ以上に細かく取り決めるべきなのかは、夫婦の関係性や子供の意思や年齢など様々な事情に左右されますので、ケースバイケースと言わざるを得ません。
一度弁護士に相談することをおすすめします。

面会交流を拒否したい

離婚した夫婦の中には、「二度と連絡も取りたくない」というほどに夫婦の仲が崩壊してしまい、親権者となった者が子供を相手に会わせたくないと考えることもあります。
しかし、原則として、相手との面会交流を親権者の意向で拒否することはできません。なぜなら、面会交流は、あくまで子供の利益のための制度であって、親のための制度ではないからです。
もっとも、面会交流を拒絶することが子供の利益になると認められるような例外的な場合には、親権者としてこれを拒否できることもあります。たとえば、面会交流を要求している親が子供に対して暴力を振るう可能性が高い場合などが、これに当たります。