賃貸借契約と使用貸借契約について

賃貸借契約と使用貸借契約について

住居用の不動産の貸し借りは身近な契約の類型ということができ、当弁護士事務所の不動産・建築トラブル解決専門サイトのコラムでも、賃貸借契約における原状回復義務(ペットが付けた傷の原状回復)や期間(賃貸借の期間)などの問題について説明をさせていただいております。

そこで、今回は、住宅用の不動産の貸し借りの場面で用いられる契約のもう1つの類型として使用貸借契約について説明したいと思います。

まず、使用貸借契約と賃貸借契約の違いは、地代や家賃といった賃料を支払うという約束であれば賃貸借契約、賃料の支払いが無い場合は使用貸借契約という契約関係になります。

そして、どちらの契約であるかによって、法定更新の有無や、不動産を使用収益する権利(賃借権、使用貸借権)が相続の対象になるかどうかなどの違いが生じることになります。

そこで、使用貸借契約か賃貸借契約かという区別が、具体的にどういった場面で問題となるかと言いますと、例えば、不動産の貸主や相続人などが、使用貸借契約が終了したことを主張し、不動産を明け渡せという請求をしたことに対して、借主が、使用貸借契約ではなく賃貸借契約であるから、使用貸借契約の終了という理由はなく、賃貸借契約として存続しているから明け渡さないという反論をするといった形で具体的な紛争にあらわれます。

実際に争われた裁判例を挙げますと、例えば、借主が「地代」の支払いはしていませんでしたが、固定資産税や、不動産の所有者と同居してその生活費の一部を負担していたという事案では、それらの支払いが、「不動産の使用収益に対する対価の意味をもつと認めるに足りる特段の事情が窺われないから」、その契約は賃貸借契約ではなく、使用貸借契約であるという判断がされた事例(最高裁判所昭和41年10月27日)や、逆に、近隣の家賃の相場と比較してかなり低額の賃料を支払うこととしていた契約について、その賃料の支払いは部屋の使用の対価ではなく謝礼であるとして、賃料の支払いがない契約であるから賃貸借契約とは認めないという判断がされた事例などがあります(最高裁判所昭和35年4月12日)。