土地賃借人の賃料不払と地上建物の賃借人

土地賃借人の賃料不払と地上建物の賃借人

先日次のような相談がありました。

  • BがAから建物所有目的で土地を賃借し、この土地の上にBが建物を建てて使用していた。
  • その後、Bがこの建物をCに賃貸し、Cがこの建物で飲食店を経営していた。
  • ところが、2か月ほど前からBが所在不明になってしまい、地代を支払っていない。
  • このままの状態が続き、Aから賃料不払を理由にA・B間の土地賃貸借契約が解除されてしまった場合、Cはこの建物から出て行かなければならなくなってしまうのでしょうか。

まず、今のように賃料の支払いがなされない状態が続けば、土地の賃貸人Aは、その土地から収益を得られない状態が続くことになり、この土地を有効に利用できなくなるわけですので、賃料不払=債務不履行を理由にBとの間の土地の賃貸借契約を解除することができることになります。

その場合、この土地上に建っているB所有の建物は、土地の使用権を失うことになりますので、AはBに対し、この建物を取り壊して土地を明け渡すよう求めることができるところとなります。

このような事態になった場合、Cはこの建物を使用できなくなってしまいますので、BとCとの間の建物賃貸借契約も履行不能によって終了してしまい、結局Cは、この建物で飲食店を続けて行くことができず、この建物から退去しなければならなくなってしまいます。

このような場合、Cがこのような事態となることを避けるためには、AとBとの間の土地の賃貸借契約が解除されないようにする必要があります。

つまり、Bが支払うべき地代をCがAに直接支払うことができれば、Bの賃料不払という状態(債務不履行状態)が解消されますので、土地の賃貸借契約が解除されなくてすみ、Cも引き続き建物を使用することができるとろになります。

ただ、Cは、A・B間の土地の賃貸借契約の当事者ではないため、Cが直接Aに地代を支払うことが法的に認められるかという点です。

この点に関し、民法474条1項は、「債務の弁済は、第三者もすることができる。」とし、第2項には「利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない。」と規定しています。つまり、土地の賃貸借契約の当事者ではない第三者Cが弁済することに「利害関係」を有していると認められれば、CはBの意思に関係なく直接Aに対して賃料の支払いをすることができることになるのです。

この点につき、最高裁昭和63年7月1日判決は、「土地賃借権が消滅するときは、建物賃借人(C)は、賃借建物から退去して土地を明け渡すべき義務を負う法律関係にあり、建物賃借人(C)は、敷地の地代を弁済し、敷地の賃借権が消滅することを防止することに法律上の利益を有する」と判示しています。

したがいまして、Cは、Bの意思に拘わらず、BがAに対して支払うべき地代を、自ら直接Aに支払うことができることになり、敷地土地の賃貸借契約を解除されずにすみ、従前どおり建物の使用をつづけてゆくことができることになります。

なお、AがCからの賃料の支払いを受領しないときは、そのままにしておかず法務局に供託しなければ賃料弁済の効力が生じなく、結局土地と賃貸借契約を解除されてしまいますので、注意してください。