インターネットにおける消費者取引

インターネットにおける消費者取引

インターネットの普及により、ネット上で買い物をする機会が増え、それに伴い購入に関してのトラブルが増加しました。

例えば、消費者が、注文をキャンセルしようとして、キャンセルのボタンを押すところを、操作ミスにより注文のボタンを押してしまい、注文完了のメールが届いてしまうトラブルがあります。

隔地者間の契約については、民法526条1項で、承諾の通知を発したときに契約が成立すると規定されているため、消費者が、注文ボタンを押して、それに対して事業者が注文完了のメールを送信した時に、売買契約が成立することになります。

また、消費者が、数量を「1」個と入力して注文するところ、操作ミスにより「11」個と入力して注文してしまうトラブルもあります。

真意と異なる意思表示については、民法95条の錯誤として、意思表示は、法律行為の要素に錯誤がある場合は無効となりますが、表意者に重大な過失があった場合は無効を主張することはできないと規定されているため、消費者が、商品を11個購入するつもりがなく、そうであれば購入しなかったけれども、ちょっと考えれば11個購入する意思表示をしなかったといえる場合は、消費者に「重過失」があるため、購入の意思表示の無効を主張することはできず、結果として契約が成立します(民法95条)。これは、前述した注文のボタンの操作ミスにも当てはまります。

しかし、ネット上の取引では、通信障害により事業者の送信した承諾の通知が消費者に到達しなかった場合、契約の成立時期が、消費者には不明であり、そのリスクを負わせるのは妥当でないこと、また消費者の操作ミスにより契約が成立する可能性が高く、いかなる場合も消費者が契約の無効が主張できないとすると、消費者の保護として妥当でありません。

そこで、ネット上の取引については、電子契約法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)の適用により、消費者の救済を図ることになります。

電子契約、すなわちインターネット上を使っての取引について、契約の成立時期は、承諾の通知が申込者に到達した時点で成立することになります(法4条)。この規定の適用により、消費者は、事業者から契約完了メールを受領するまでは、購入の意思表示を撤回することができます。

また、操作ミスによる契約の申込みについては、消費者が申し込みを行う前に、申し込み内容などを確認する措置を事業者側が講じないと、操作ミスによる消費者の申込の意思表示は無効となります(法3条)。

この規定の適用により、消費者は、操作ミスについて、錯誤により契約成立について無効を主張することが出来ますが、事業者側が、消費者が購入ボタンを押したあと、購入の意思を確認するような画面設定や数量を確認する画面設定など、消費者に訂正できる機会を与える画面設定をしていた場合は、無効を主張することができません。

このように、インターネット上の取引は、消費者の意思確認について重きを置かれていますので、消費者は、確認を怠らないようにしてネット上の取引を行う必要があります。

なお、事業者側が確認措置を講じた上で、消費者が注文確認ボタンを押したとしても、契約の対象物である商品に関して、事業者側が虚偽の説明をした等の場合には、消費者契約法の適用により、消費者は取消を主張できることになります(法4条)。