遺留分減殺請求後の法律関係(不動産)

遺留分減殺請求後の法律関係(不動産)

次のような事例でご説明します。

(1)父が亡くなり、相続人は、妻(母)と長男と二男の3名で、父が遺言により長男にすべてを相続させる遺言を遺した。
(2)遺産としては、8000万円相当の甲土地がある。

この場合の、各相続人の遺留分割合は、妻は1/4、長男は1/8、二男は1/8で、遺留分額は、

  • 妻  8000万円×1/4=2000万円
  • 二男 8000万円×1/8=1000万円

となります。

したがって、妻は2000万円、二男は1000万円、それぞれ遺留分を侵害されたことになります。

そこで、妻と二男が長男に対して、それぞれ2000万円、1000万円について遺留分減殺請求したとしますと、これにより甲土地について、妻は1/4、二男は1/8の持分を取得することになります。
この結果、甲土地は、長男5/8、妻2/8、二男1/8の割合による共有状態となります。

そこで、妻や二男は、今度はこの甲土地の共有状態を解消させるため、共有物分割請求をすることになります。この分割請求は、もちろん調停という方法で話し合いによって解決することも可能ですが、話し合いが成立しなかったときは、共有物分割請求の訴訟を提起することになります。

この分割は、現物分割、代金分割、価格賠償という分割方法があります。

現物分割は、甲土地を長男、二男、妻の共有割合で分筆して、それぞれが分筆後の土地を単独取得するという分割方法です。

しかし、土地が狭くて、あるいは形状が悪くて、現物分割が困難な場合は、この分割は相当ではなく、この土地を競売に付して売却代金をそれぞれの持分割合で取得するという分割方法が設けられています。これが代金分割です。

ただ、この土地の上に長男が建物を建てて所有している場合には、長男はこの土地を失いたくないため、この土地を単独で取得することを望むと思います。この場合、長男は、この土地について妻と二男に対してそれぞれの持分に相当する価額(すなわち、妻に2000万円、二男に1000万円)を支払ってこの土地を単独で取得することを求めることができます。これが、価額弁償による分割方法です。

したがって、長男が、このお金を支払うだけの資力がない場合には、結局は代金分割によるしかないことになります。