被相続人が亡くなった後遺産分割が未了の間に相続人の一人が亡くなった場合

被相続人が亡くなった後遺産分割が未了の間に相続人の一人が亡くなった場合

再転相続について

再転相続における相続放棄

事例1 Xの祖父Aが死亡し、その子である父Bが、Aの相続について承認も放棄もしないまま熟慮期間内に死亡した。

上記のような事例では、まずBはAの相続人にあたりますが、Bが死亡したためXはBの相続人としてAを相続することになります。このような相続を再転相続といいます。
事例1の場合、Xは、ABともに相続することも、ABともに相続を放棄することも可能であり、さらにAの相続は放棄し、Bのみを相続することも許されます。もっとも、Bの相続は放棄し、Aのみを相続することはできません。

それでは上記の事例に次のような事情がある場合、Xはどのように対処できるのでしょうか。

  • 事例1-1 Aは生前多額の借金があったが、Bには借金はなく不動産や預金など財産がある
  • 事例1-2 Aには不動産などの財産があるが、Bには多額の借金がある。

   
事例1-1の場合、Xは、Aについては相続を放棄し、Bのみを相続することが許されます。
他方、事例1-2の場合、XとしてはBの相続は放棄し、Aのみを相続したいところですが、それができないことは先に述べたとおりです。そのため、Xは、ABともに相続してBの借金を返済するか、Aについての相続を諦め、Bの相続を放棄することになるでしょう。

なお、XがAについて先に相続の放棄を行い、その後Bについても相続の放棄を行った場合、先に行ったAについての相続放棄の効力は判例上有効とされています(最高裁昭和63年6月21日判決)。

再転相続における特別受益

  • 事例2 父Aが死亡し、その妻Bと子供C及びDが相続したが、Aの遺産分割が未了のままBが死亡した。

   
この場合、Aの遺産について、Bが2分の1、C及びDがそれぞれ4分の1の共有持分権を有することになります。そして、Bが相続したAの遺産の2分の1の共有持分権は、Bが死亡した場合、Bの遺産を構成するため、Bが相続したAの遺産についての共有持分権をCとDとの間で分割しようとする場合には、遺産分割手続きを経る必要があると判例上されています(最高裁平成17年10月11日決定)。

そのため、Aの遺産及びBの遺産ともにCとDとの間で遺産分割を行わなければなりません。

  • 事例2-1 Bの死亡時、Bには財産はなかったが、生前BはCに対し現金を贈与していた。

   
事例2-1の場合、Bの相続に関してCが贈与された現金は特別受益に当たります。そのため、Bの遺産分割にあたっては、Cの特別受益を持ち戻し、Aの遺産に関するBの共有持分に特別受益を合計した上で、Aの遺産に関するBの共有持分についてC及びDの具体的相続分を算定することになります。