預貯金の遺産分割

預貯金の遺産分割

遺産には、土地建物などの不動産、株や社債国債などの有価証券、絵画や骨董費などが含まれていることが多いですが、必ずあるのが預貯金です。今回は、この預貯金の遺産分割についてご説明します。

たとえば、父が亡くなり、母と長男と二男がいる場合、法定相続人及び法定相続分、妻が1/2、長男と二男は1/4ずつとなります。

そして、遺産としては、

  • ①父・母・長男が同居して住んでいる時価2000万円相当の自宅土地建物
  • ②A銀行の500万円の定期預金
  • ③B信用金庫の300万円の普通預金

があったとします。

このようなケースで、遺言が遺されていなかったとき、遺産分割はどのようになされるのでしょうか。相続人全員で話し合い、合意ができればどのような内容でも分割協議を成立させることができます。たとえば、母が不動産も預金もすべて取得するという内容でもかまいませんし、不動産を母が取得し、預金を長男と二男で1/2ずつ取得するという内容でもかまいません。

問題は、相続人間でそれぞれが主張するところが強く、このような協議を成立させることがだきないときにどうなるのかということです。

相続人間で協議を成立させることができないときは、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立て、そこで話し合いをすることになりますが、ここで注意しなければならないことは、預貯金は原則として遺産分割の対象から外れるということです。

預貯金は、金融機関に対して有する預金者の債権(払い戻し請求権)で、この債権は可分債権(分割することができる債権)ですので、相続開始と同時に相続人に法定相続分に応じて当然に分割されるのです。

つまり、②のA銀行の500万円の定期預金については、1/2である250万円が母に、1/4である125万円ずつ長男と二男に当然に分割され帰属することになるのです。③のB信用金庫の300万円の普通預金についても同様に、母が150万円、長男と二男が5万円ずつを当然に取得ところとなります。

このように、話し合いができなければ、②と③の預金は当然に分割されることになりますので、遺産分割の対象から外れるところとなり、残るは①の不動産だけということになります。この不動産をだれがどのように取得するかについては引き続き相続人間で話し合うことになりますが、この点つきましては後日改めてご説明します。

ところで、当然に分割されることになった預金は、その後具体的にどのような手続きをとって払い戻しを受ければよいのでしょうか。

理論的には、当然に分割され、母はA銀行の定期預金について250万円、B信用金庫の普通預金について150万円の払い戻し請求権を取得することになりますので、母は、被相続人である父が生まれて亡くなられるまでのすべての戸籍を取り寄せ、相続関係ないし自らの法定相続分を証明したうえで、A銀行とB信用金庫に払い戻しを請求すればよいことになります。

ただ、金融機関によっては、他の相続人が遺言書を持っているかもしれないとか後日遺言書がでてくるかもしれないとかいった理由で、相続人全員の署名捺印のある書類を提出しなければ払い戻しに応じてくれないことも数多く見受けられます。

しかし、そもそも話し合いができないから問題となっているわけですから他の相続人の印をもらうことは無理なことですので、このような場合は金融機関を相手に払い戻し請求の訴訟を提起し、判決を得て払い戻しを受けることになります。

このように、預金については本来遺産分割の対象とはならず、個々に払い戻し請求の手続をとることになりますが、相続人全員が、預貯金を遺産分割の対象とすることに異議なく承諾すれば、預貯金も遺産分割の対象とすることができ、不動産やその他の遺産と併せて遺産分割の協議をすることになります。

ただ、遺産が預貯金だけで他に不動産などの遺産がない場合には、預貯金がそもそも遺産分割の対象とならないことから、預貯金について遺産分割の調停の申立をしても受け付けてもらえませんので、ご注意ください。