失踪宣告・相続人が生死不明のとき

失踪宣告・相続人が生死不明のとき

失踪宣告「相続人の中に生死不明の人がいるとき」

ある人が亡くなり、その人が財産を持っていた場合、その財産について相続人の中で遺産分割をすることになりますが、相続人の中に行方不明の人がいると、分割の手続を進めることは困難です。しかし、その相続人が長期間にわたって行方不明であるような場合であれば、家庭裁判所における失踪宣告という手続をとることによって、遺産分割の手続を進めることは可能となります。

そこで、今回は、失踪宣告について説明したいと思います。失踪宣告とは、行方不明者(法律上「不在者」といいます。これは、従前の住所地を去って、戻る見込みのない人のことをいいます。)や生死不明の者に対して、実際の生死にかかわらず、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

この制度には、普通失踪と特別失踪というものがあります。普通失踪とは、不在者の生死が7年間明らかでないときに、その不在者について死亡したとみなすものです。一方で、特別失踪とは、戦争や船舶の沈没、震災などの死亡の原因となるような危難に遭遇した者の生死が、その危難が去ったときから1年間不明であるときに、その者について死亡したとみなすものです。

次に、失踪宣告手続の概要を説明します。まず、利害関係人(最初の例でいうと他の相続人等です)が、家庭裁判所に対して、申立書や戸籍謄本等の必要書類を提出して手続の申立てを行います。申立てを行うと、裁判所の職員によって、申立人に対する聴き取りなどの不在者についての調査が行われます。

その後、裁判所の掲示板及び官報等において、失踪宣告の申立てがあったことや不在者に対して、一定の期間までに生存の届出をすべきこと等の事項が掲示されます(これを公告といいます)。この公告は、一定の期間を設けて行われることになりますが、そのために設けられる期間としては、普通失踪であれば3ヶ月以上、特別失踪であれば1ヶ月以上とされています。

この公告期間が満了すると、裁判所において失踪宣告の判断が出されます(これを審判といいます)。失踪宣告の審判が出されても、その結果に対して不服がある人のために、異議申立期間(2週間程度)が設けられます。その期間中は、失踪宣告の審判結果は確定せず、その期間が経過することによって、審判結果について誰も争うことが出来なくなります。なお、戸籍のうえでも死亡したことにするため、審判が確定したあとに市区町村役場での手続が必要となります。

以上のような失踪宣告の手続を経ることによって、不在者や生死不明者は死亡したものとして扱われることになります。最初の例でも、行方不明の相続人が失踪宣告の要件を充たすのであれば、その手続を経ることで、死亡したものとして扱われるため、その相続人を除いて遺産分割の手続を進めていくことが可能となるのです。