保釈保証金について

保釈保証金について

刑事裁判における「保釈金」についてご説明します。

保釈保証金とは

そもそも、「保釈金」は一体どのようなものでしょうか。一般の方の話を聞くと、保釈金を支払えば無罪放免になるとか、保釈金を払うことで執行猶予がつく、といった間違った理解をしてしまっている場合も多々あります。そこで、まずは「保釈金」がどのようなものかをご説明します。

「保釈金」は、正式な名称は保釈保証金(刑事訴訟法94条1項等では単に「保証金」と規定されています。)といい、保釈の際に定められる保証金のことを指します。保釈というのは、被告人が裁判所に一定の金銭を納付すること等を条件に,勾留(刑事裁判のために警察署や留置場に身柄拘束されること)の執行を停止して被告人を身柄拘束から解放させる刑事裁判上の制度をいいます。この被告人が裁判所に納付する一定の金銭が保釈保証金なのです。

そのため、保釈保証金は、刑事裁判の判決を軽くするための金銭ではありません。あくまでも、裁判(正確に言うと、最大で3回あり得る裁判のうち、保釈の決定が出た1回分の裁判)が終わるまでの間、警察署や留置場から出て、自宅等で生活するために納める金銭です。

この保釈保証金について、最も多い誤解は、保釈保証金は保釈のために納めたらもう返ってこないというものです。保釈保証金は、保釈によって警察署等の外に出ることができた被告人に対して、そのまま逃走したり関係者を脅す等して嘘の証言をしてもらうといった行為をさせないためのいわば人質のために納付されます。そのため、保釈された被告人が、逃走等すれば、保釈保証金は没収されて返ってきませんが、そのような行為をしなければ、判決の結果有罪ですぐに刑務所に入ることになったとしても、保釈保証金は返却されます。そのため、保釈保証金は、被告人の保釈を金で買うような制度ではありません。この点は誤解されませんようお願い致します。

また、たまに、保釈の申請を出して高額の保釈保証金を用意すれば必ず保釈されると思っている方もいますが、保釈は必ず許可されるものではありません。保釈には、特定の条件(裁判で問題となっている犯罪が一定以上の重罪であることや、過去に一定以上の重罪について有罪判決を受けたことがあること、保釈されれば罪証隠滅行為(証拠を破棄、偽造、変更等すること)をすると疑われる相当な理由があること等。除外事由等といわれます)のいずれにも該当しなければ許可しなければならない必要的保釈(刑事訴訟法89条)と、除外事由に該当するが、裁判所が被告人を保釈するのが適当だと判断した場合に許可される職権保釈(裁量保釈(同法90条))の2種類が存在します。そのため、除外事由に該当し、かつ、裁判所に保釈するのが不適当だと判断された場合、被告人は、保釈の申請をしても、許可を得られず身柄拘束から解放されません。また、保釈保証金の金額は裁判所が決定しますので、被告人側から金額を指定することはできません。よくニュースで、罪を犯した有名人が数千万円から数億円の保釈保証金を支払って釈放されたという内容が報道されますが、その保釈保証金の金額は、あくまで裁判所が決めたものであり、有名人が決めたものではありません。

さらに、保釈についての誤解として、逮捕されてから起訴(事件について刑事裁判にかけるための手続)されるまでの間にも保釈の申請ができると思っている方がいますが、これは誤りです。保釈はあくまでも被告人、すなわち起訴された者についての制度であり、起訴される前の者(刑事法上は被疑者といいます)はこの制度を利用することができません。ですので、被疑者について、保釈の申請をしても、何ら効果はありません。

保釈保証金の金額

保釈保証金の金額について、何かしらの算定基準があるわけではありません。ただ、金額の相場というものはあり、概ね150万円から300万円の範囲だと言われています。

では、どのように保釈保証金の金額が決まっているかというと、保釈保証金は、いわば被告人に対する人質なのですから、被告人が、逃亡や罪証隠滅をためらうような金額でなければなりません。そのため、保釈保証金の金額を決める際、裁判で問題となっている犯罪の重大さは勿論問題となりますが、被告人の資力の方がより重く考慮されます。先程挙げました有名人の保釈保証金の金額は、その有名人が、保釈保証金を数千万円から数億円とする必要があるくらい重大な犯罪を犯したと判断されたのではなく、この金額でなければ人質とはならないくらい、財産があると判断されたと見るべきでしょう。

保釈保証金の準備

以上の保釈保証金の説明を踏まえると、どんなに軽い犯罪だとしても、保釈されるためには、150万円程度の金銭が用意できなければならないと保釈を諦めてしまう方がいるかもしれません。

しかし、日本には、日本保釈支援協会等の保釈保証金を貸すための専用の機関があります。そこで、自分や身近な人が被告人となってしまい、保釈保証金を用意できない場合は、日本保釈保証協会等に相談して、保釈保証金を貸してもらえないかを聞いてみるのがいいと思います。ただし、機関によっては、利息が生じる場合もありますので、その点はしっかり確認した上で、保釈保証金の借入れを利用した方が良いでしょう。