失業保険の仮給付について

失業保険の仮給付について

労働者が務め先から解雇をされ、これが不当であるとして解雇の無効を争う場合、給料が得られない状態で労働審判や裁判の手続を進めることになります。

そのため、当面の生活費を得るために、失業保険を受給することが必要になると思います。しかし、失業保険は、解雇をされ失業していることが前提になるものですから、解雇が無効であるという主張と矛盾することになります。

そこで、ハローワーク(公共職業安定所)では、雇用保険法の運用として、解雇の無効を争う場合であっても、失業保険の仮の給付を認めるという対応がされています。

この仮給付を受給するためにはハローワークでの申請が必要になりますが、その手続や要件は、通常の失業保険の受給とほぼ同様です。

ただし、それに加えて、解雇の無効を争っていることについての資料の提出を求められることがあります。

当事務所で対応した事案では、解雇が無効であることを会社へ通知した内容証明郵便の写しや、労働審判申立書の写しなどの資料を、ハローワークから提出するよう求められたことがあります。ただ、どのような資料の提出が必要となるかは、ハローワーク毎に個別に指示がされているようです。

また、仮給付であるため、解雇が無効となった場合に失業保険を返還しなければならない場合があることに気を付けないといけません。

これは、解雇が無効であれば、その労働者は失業していなかった、すなわち、失業保険の支払いを受ける権利が無かったということになるため、返還が必要ということになります。そして、この場合に返還をしなければ不正受給という扱いを受けることになります。

さらに、裁判や労働審判で、解雇を全面的に無効とせず、例えば、会社都合の合意退職であったこととして労働者が解決金の支払いを受けるというような和解によって事案を解決をする場合があります。

この和解をする場合にも、解雇された日に合意退職したこととする場合は仮給付の返還は必要ありませんが、解雇は一旦取り消して和解の日などに合意退職したこととする場合には、返還が必要となります。

そのため、これらの点は、十分意識して、和解などに対応することが必要になります。

以上、失業保険の仮給付というハローワークの運用についてご説明させていただきました。