事業者とクーリングオフ

事業者とクーリングオフ

個人事業主の方から、インターネットに関する機器や、多機能電話、FAXなどの事務機器について、割賦払いで購入、あるいはリース契約をしたが、よくよく考えてみるとうちでは必要がないと思い直したので、クーリングオフをしたいという相談を受けることがあります。

そこで、今回は、事業者とクーリングオフに関して説明をします。

クーリングオフということばは広く知られるようになりましたが、訪問販売や電話勧誘販売など「特定の取引方法」で契約をした場合、一定の条件をみたすときに、消費者が一方的に契約をとりやめることを認める制度で、どんな取引でもクーリングオフができるわけではありません。

そして、このクーリングオフは、契約が成立した後であっても、消費者保護という観点から、相手側に落ち度がなくとも、消費者の側から一方的に契約を解消することを認める制度です。ですので、クーリングオフを認めているそれぞれの法律では、「消費者」であることがクーリングオフをするための要件として定められています。

逆にいえば、「消費者」にあたらない「事業者」が「営業のため」に行った取引については、クーリングオフが原則として認められていません(特定商取引に関する法律26条1項、割賦販売に関する法律8条1号、35条の3の60など)。

ただし、個人事業の屋号や法人名義で取引をした場合であっても、クーリングオフが認められる場合があり、裁判で争われている事例もあります。

それらの裁判では、個人事業主や法人名義で契約を締結したということだけでクーリングオフを認めないというのではなく、その契約が事業のためにされたものか、売買・リースの目的物が事業に寄与するのか、個人的な利用にとどまるのかという点を検討して、契約を「営業のため」に締結したものかどうかを判断し、営業のための契約とはいえない場合にはクーリングオフを認めるという判断がされています。

ですので、事業者として取引をした物品についてクーリングオフをしたい、契約を取り止めたいという場合、例外的にクーリングオフが認められる場合にあたるのかという検討をする必要があります。

この検討についてはクーリングオフを定める法律と、事業の内容や取引の経緯、取引後の目的物の使われ方など、具体的な事実を把握した上での判断となりますので、詳しくは当弁護士事務所へご相談いただければと思います。