借金などの消滅時効について

借金などの消滅時効について

最近では、知人からお金を借りて10年以上何の請求もなかったのに、今になって急に請求されたが、10年以上も前の借金を返す必要があるのか困っているという方や、建物の賃借人が何年も賃料を支払わず、何度も請求書を送ったが一向に支払う様子がないので裁判で請求したいという貸主の方からの相談が多々あります。
そこで、今回は、権利を一定期間行使しないとその権利は消滅するという消滅時効の制度について説明します。 

民事上の時効

まず、民事上の時効というのは、ある事実状態が一定の期間続いた場合に、実際の権利関係に合っているかを別にして、その事実状態を尊重して、ある人が権利を取得すること、あるいは、権利を失うことを認める制度です。

このうち、権利が行使されない状態が一定期間続いた場合に、その権利が消滅する制度を消滅時効といいます。つまり、権利を行使しないために権利を失ってしまうのが消滅時効です。

このように、権利は一定期間行使しないと時効の制度によって消滅してしまうのですが、その期間は権利によって異なります。

例えば、

  • 個人間でお金を貸した場合の貸金返還請求権や、一般の個人間での売買の代金支払請求権は10年です。
  • 賃料債権や、消費者金融会社から借入れた場合の消費者金融の貸金返還請求権は5年(会社組織ではなく個人で金融業を営んでいる者の貸金返還請求権は10年)です。
  • 病院での治療費や、建築工事の工事代金などは3年です。
  • 電気料金・ガス料金などは2年です。
  • タクシー代・レンタカー代・DVDのレンタル代・飲食店のつけなどは1年間です。

以上のように、権利は一定期間行使しないと消滅することになりますが、上記のような期間が経過するだけで自然に消滅するということはありません。

一定の期間が経過したところで、債務者側から債権者に対して時効が成立したことを主張しなければ権利は消滅しないのです。これを、時効の「援用」と言いますが、この時効の援用をしなければ権利は消滅しませんので、債権者は依然として権利を主張できますし、債務者も債務が残ったままとなってしまいます。

従って、時効期間が経過した後に債務の消滅を望む方は、必ず債権者に対して時効の援用通知を出す必要があります。この通知は、書面で作成し、内容証明郵便の形式で発送し、債権者にこれが到達したことを証するために配達証明つきで郵送してください。

他方で、民法においては、一定の事由があれば時効期間の進行が中断され、それまでに経過した時効期間の効力が消滅することを認めています。これを時効の中断といいます(なお、時効期間は中断時点から再び進行します)。 
 
民法においては、一定の事由として「請求」や「承認」といったものを定めています。「請求」というのは、債権者が債務者に対して支払を求めたりすることですが、時効の中断が認められるためには、裁判や支払督促といった裁判所の手続を講じる必要があります。単に、債務者に対して請求書を送るだけでは時効中断の効力は認められません。何度送っても同じです。請求書を送る行為は、法律上「催告」といいますが、催告だけでは足りず、催告をしてから6ヶ月以内に上記のような裁判所の手続を講じる必要があるのです。

また、「承認」というのは、債務者が債権者に権利があることを認めたり、権利の一部につき弁済したりすることです。なお、時効期間が経過した後であっても、この「承認」にあたるような行為をすると、時効の援用が認められないことがあります。これは、債務者が、時効期間が経過して事項の援用ができることを知らなかった場合でも同じです。

ここまで、消滅時効について説明してきましたが、具体的な事案によって取るべき手段・手続や、時効期間の起算点(スタート時点)が異なってきますので、契約をしてから長期間経っているけれど権利が消滅したのかわからない、時効の援用をしたいけれどどうすれば良いのか分からない、時効中断の手続を取りたいけれど具体的にどのようなことをすれば良いのか分からないなど、時効に関する問題でお困りの方は一度ご相談ください。