相続開始後の賃料

相続開始後の賃料

相続が開始して、遺産の中に賃貸中の不動産がある場合、その賃料収入は誰がもらえるのでしょうか。

このように不動産から生じる賃料収入を、法律用語で「法定果実」といいます。法定果実の定義は、「元物の使用の対価として収取される金銭その他の物」で、賃料のほか、利息等も法定果実に当たります。

遺産分割の対象になるのは相続開始時の相続財産ですから、相続開始後に生じた賃料債権は、遺産分割の対象にはなりません。そこで、相続開始後に生じた賃料収入は誰がどれだけ取得することができるのかが問題となるのです。

この点、民法第909条は、「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と定めています。これをそのまま読むと、遺産分割協議において、ある相続人が賃料収入のある不動産を単独で取得することになった場合、その相続人が相続開始時にさかのぼってその不動産を所有していたことになり、相続開始時以降の賃料収入も、その相続人がすべて得られるように思われます。

しかし、この点については最高裁第一小法廷平成17年9月8日判決において、「(相続開始後に生じた賃料債権は、)各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。」として、遺産分割未了の間の賃料収入は、各相続人が法定相続分に応じて確定的に取得するものであると判断しています。

そして、その理由として、「遺産は・・・相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであ」り、後に遺産分割が成立したとしても、「各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない」としています。

相続開始後に生じた賃料債権は遺産に含まれないため遺産分割の対象になりませんが、遺産分割協議が成立するまでの間、遺産は共同相続人が相続分に応じた共有状態となっていますから、遺産から生じる法定果実についても、共同相続人が相続分に応じて確定的に取得することとされました。

以上のように、遺産の中に賃貸中の不動産がある場合は、相続開始後に生じた賃料収入は、共同相続人がそれぞれ取得できますので、遺産分割協議をする際は、この点にも留意するようにしてください。