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相続法の改正 遺産分割前の預貯金の払い戻し制度について

カテゴリー 2019年07月10日

1 遺産分割前の預貯金の払い戻し制度

(1)遺産分割前の預貯金払戻しの必要性

皆様は、仮にご自身が複数の相続人とともに共同相続人となり、その相続財産の中に預貯金があったら、これをご自身単独で引き出せたらよいのにと思われるかもしれません。

実際、亡くなられた方のお葬式の費用であったり、ご遺族の方々の生活費であったり、(相続財産の中でも使いやすい)現金が必要となりそうな場面は多々考えられます。

結論として、遺産分割前でも、この預貯金を単独で引き出すことができるようになります。そこで、今回は、遺産分割前の預貯金の払戻し制度についてお話ししたいと思います。

 

(2)制度創設の経緯

平成28年12月19日、最高裁は、「複数の相続人が共同相続した預貯金債権は、遺産分割の対象となる」と判断しました。

遺産分割とは、簡単に言うと、相続人が複数存在する場合に、相続人間でどの財産をどのように分け合うかを決める手続きのことです。

そして、預貯金債権がその遺産分割の対象となるということは、相続人間で預貯金をどのように分け合うかを決めるまでは、相続人全員の同意がない限り、単独で払い戻しをうけることはできないことを意味します。

こうした最高裁の判断により、実務上、相続債務の弁済や相続人の生活費や葬儀費用などのために緊急の支払いに応じることが困難となり、この需要へ応えるべく、遺産分割前の預貯金払戻し制度が創設されたのです。

 

2 払戻しの方法

新制度において遺産分割前に払戻しが認められる方法としては、以下の2つがあります。

(1)家庭裁判所に対し、預貯金の払戻しを申し立てる方法

この方法は、家庭裁判所に遺産分割の審判または調停を申し立てたうえで預貯金の払戻し(正確には、仮分割の仮処分といいます)の申立てをするもので、申立て額の範囲内で裁判所が必要と判断すれば、特定の預貯金債権の全部を取得することも一応あり得ます。

ただし、共同相続人間の公平を欠くような額の払戻しは認められません。

また、前提として遺産分割の審判または調停を申し立てる必要があり、コストや時間がかかります。

調停や審判で遺産分割の話し合いをしようとしている共同相続人にとっては、利用しやすい制度といえるでしょう。

 

(2)相続人が金融機関の窓口で単独で払戻しを求める方法

この方法では、(1)の方法とは異なり、払い戻しの必要性も要求されず、調停などの裁判手続きも不要なため簡便です。

ただし、簡便な払い戻しが認められる代わりに、各共同相続人が引き出せる上限額は、相続開始時の遺産に属する預貯金の額の3分の1にその共同相続人の法定相続分を乗じた額(金融機関ごとに150万円を限度とする)となっています。

たとえば、夫婦と子供二人の4人家族で、父が亡くなった場合、妻と子供の法定相続分はそれぞれ2分の1、4分の1となります。このとき、A金融機関に預貯金が1200万円あるとしますと、妻については、

預貯金の額の1/3×法定相続分=1200万円×1/3×1/2=200万円

となりますが、150万円が限度となっていますので、妻は150万円しか払い戻すことができません。

ちなみに子供は、100万円全額(400万円×1/4)を払い戻すことができます。

また、同一の金融機関に普通預金と定期預金など種類の異なる預金がある場合には、個々の預金ごとに上記と同様の限度額が適用されます。

つまり、B金融機関に360万円の普通預金と1200万円の定期預金があった場合、先ほどの例で挙げた妻は、普通預金60万円(360×1/3×1×2=60)と、定期預金150万円(1200×1/3×1/2=200だが、口座ごとの上限額150万円のため)をB金融機関から単独で引き出すことができるのです。

上記2つの方法の使い分けとしては、葬儀費用など特に緊急性が高い費用については時間のかからない(2)の方法で払戻しを受け、緊急性がそこまで高くない相続人の生活費用については金額に上限がない(1)の方法で払戻しを受ける、といったものが考えられます。

 

3 若干の注意点

(1)、(2)いずれの方法をとった場合も、具体的な遺産分割においては、すでに払い戻された預貯金も対象として含めてどのように財産を分け合うかが検討され、遺産分割で決定される各人の具体的な相続分に影響を与えます。

場合によってはもらいすぎた預貯金を清算する必要があることにも留意しましょう。

なお、施行は平成31年7月1日からとなっています。

相続開始日(被相続人の死亡日)が、この日より前であったとしても、遺産分割前の払戻しの制度は利用可能です(法務省HP「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日について」http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00237.htmlを参照)。

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