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景観利益と眺望利益

カテゴリー 2018年04月18日

 もし、あなたの住んでいる家の近くに高層マンションが建ってしまって、街の景観が害されることになったら、もしくはあなたの家から見えた良い景色が害されることになったら、誰にどのような法的責任を問うことができるでしょうか。

1.景観利益と眺望利益の権利性

 そもそも、景観利益・眺望利益といわれる権利は、法律上の保護された利益(侵害された場合に法的救済を受けることのできる利益)なのか議論があります。
ここで、①一般的に街の外観が害される(例えば京都に住んでいて、高層ビルが建つことにより古都としての景観が損なわれる等)という主張と、②自分の住んでいる場所からの景色が害される(例えば家の窓から富士山が見えたのに、高層ビルの建築によって見えなくなってしまった等)との主張は一見したところ似ていますが、前者が主張しているのは公共的な権利の侵害であるのに対して、後者が主張しているのは個人が享受している利益であって、私的な利益侵害を理由とするという点で大きく異なるものですので、区別して考えられるべきです。
 そこで、①のような利益を景観利益、②のような利益を眺望利益と、区分されて呼ばれています。
 では、これらの利益を害された場合、法的な救済を受けることができるでしょうか。
 まず、①景観利益については、近時最高裁(平成18年3月30日)が判断していますので、こちらの判例をご紹介します。この判例は、「景観利益とは良好な景観の恵沢を享受する利益」であると定義し、「景観利益は法律上保護に値する」ものであると述べています。しかし、「景観利益を超えて「景観権」といい得るような明確な実体を有するものであるとは認められず、「景観権」という権利性を有するものを認めることはできない」としています。したがって、もし「所有権」等の法令上もしくは判例上保障された権利が侵害された場合には、その侵害行為は違法な権利侵害であるとの推定が働きますが、景観利益についてはこれを侵害された場合であっても当然に違法な権利侵害というわけではなく、この景観利益の性質・内容と、どのような建物によりどれほど景観が侵害されているか(侵害態様・程度)、との比較衡量によって、違法に侵害されていると認められる場合にようやく法律上の責任追及が可能ということになります。もっとも、本判決が「景観利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには、少なくともその侵害行為が刑罰法規や行政法規に違反するものであったり、公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなどの」「相当性を欠く行為であることが必要である」としており、景観利益を侵害する建物が行政法規に違反していない場合には、公序良俗違反・権利の濫用がどの範囲で認められ違法となるのか、判例の蓄積が待たれるところです。
 次に、②眺望利益については、裁判例の蓄積によりますが、共通するのは「眺望も、地域の特殊性その他特段の事情下において、右眺望を享受する者に一個の生活利益としての価値を形成しているものと客観的に認められる場合には、濫りにこれを侵害されるべきではないという意味において法的保護の対象となる」として、眺望利益に一般的にその要保護性を認めることに消極的な態度を示しています。ここにいう特段の事情とは横浜地裁昭和54年2月26日によれば、①一般の社会通念から景観の眺望によって美的満足を得ることのできる眺望価値のある景観が存在すること、②当該場所の場所的価値が景観の眺望に多く依存していること、③眺望の保持が周辺の土地利用と調和すること、④眺望享受全体が正当権限を有すること等の基準を挙げており、これ以降の裁判例もおおまかにこの基準にしたがって判断していると考えられます。

2.どのような請求が可能か

 では、実際にこれら利益が違法に害された、または害される恐れがあるとしたら、どのような救済を裁判所に求めることができるでしょうか。
 すでにこれら利益を違法に害する建物が建築されてしまった場合、民法709条の不法行為責任に基づいて損害賠償請求をすることになります。不法行為責任に基づいて建物の一部撤去を求めることができるかについては議論があり、いまだ結論は定まっておりません。
 では、これから建築されそうだ、という場合はどのような請求ができるでしょうか。
 考えられるのは、民法上の差止請求をすること(法的構成については物権的構成か人格権的構成かとの争いがあります)、または建築申請等許可の差止・仮差止(行政事件訴訟法3条7号・37条の5)によることです。

3.景観利益・眺望利益について大まかに述べてきましたが、上述の通りこのような紛争において違法性が認められるか否かは個別具体的事案によって異なりますので、建築主としてどうすべきか、近隣住民としてどうすべきかお困りの方は、当事務所に是非一度ご相談にください。

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